1984年1月から4月までの4ヵ月間に, 私達の大学病院で扱った各種臨床検査材料から分離された黄色ブドウ球菌と, 1984年の1年間に血液から分離された黄色ブドウ球菌とを対象とし, その中に含まれるメチシリン耐性ブドウ球菌 (MRSA) について, 各種薬剤に対する耐性とファージ型についてその検索を行った.
1. 入院患者から分離されたブドウ球菌中に占めるMRSAの割合は13.4%であり, 血液やIVHカテーテルの先端, 膿汁からのMRSAの分離頻度が高かった.
2. 外来患者から分離されたブドウ球菌中に占めるMRSAの割合は17.5%で, 耳漏, 膿汁, 分泌物からのMRSAの分離頻度が高かった.
3. MRSAは, PCG, EM, KM, GMにも同時に耐性を示す株が多く, 入院由来株では116株中75株 (64.7%), 外来由来株では37株中30株 (81.1%) がこの耐性型を示した. 次いでPCG, EM, KMの他にTOBにも耐性を示す株が多く, 入院由来株で29株 (25.0%), 外来由来株で3株 (8.1%) みられた. これ以外の耐性を示すMRSAは10%以下であった.
4.MRSAのファージ型は, 菌の薬剤耐性型によって異なり, 特定のファージ型に偏っていた. すなわち, PCG, EM, KM, GMにも耐性を示す株では, 約半数の菌株がファージ型I群に型別され, 残りの株は型別不能, III群および混合群に型別された. それに対し, PCG, EM, KM, TOBにも耐性を示す株は, III群に型別される菌株が約半数を占め, その他では型別不能と混合群が多かった.
5.血液から分離された黄色ブドウ球菌は25株であったが, その中19株 (76.0%) が上述したメチシリン耐性を含む多剤耐性菌であり, 加えてファージ型も入院患者由来のMRSAと類似していた.
このことから, 起源を同じくするいくつかのMRSAが既に病院内に広く定着し, 患者の病態や使用抗生剤によって, 次々と患者に感染を起こしていることが示唆された.
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