日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
異なる時期に植栽したカラマツコンテナ苗の生存率,成長および生理生態特性
原山 尚徳来田 和人今 博計石塚 航飛田 博順宇都木 玄
著者情報
ジャーナル フリー
電子付録

2016 年 98 巻 4 号 p. 158-166

詳細
抄録

コンテナへ直接播種し育苗した1年生カラマツコンテナ苗が積雪期以外で通年植栽可能か明らかにするため,2014年5月から10月まで毎月植栽し,生存率,成長,生理生態特性を調べた。対象として5月には裸苗も植栽した。5月に植栽した未開葉のコンテナ苗は裸苗よりも植栽後の成長量が大きく,2成長期間で裸苗のサイズに追いついた。これは,コンテナ苗の方が植栽後の根の成長が旺盛で光合成速度や気孔コンダクタンスが高かったことが要因と考えられた。6~8月に植栽したコンテナ苗は,植栽時の細根の電解質漏出率,圧ポテンシャルを失うときの葉の水ポテンシャルおよび葉/根比が高いなど,個体全体の耐乾性が他の時期よりも低かった。さらに7月の極端に少ない降水量と土壌乾燥が重なり,6,7月植栽の当年秋の生存率はそれぞれ62, 22% と低かった。一方,8月植栽苗は植栽前後に十分な降水があり生存率が97% と高かった。9,10月植栽苗は耐乾性が高く,植栽翌年秋の生存率が高かった。現状では,カラマツ裸苗の秋の植栽は10月下旬から11月上旬までの短い期間に限定されているが,コンテナ苗の植栽により2カ月程早められると考えられた。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top