1984 年 31 巻 6 号 p. 395-400
前報に引続き,油揚生地の伸びの機構と,豆乳を長時間加熱した場合に伸び率が低下する原因を検討し,以下の結果を得た。
(1) 油揚の伸びは,SH基封鎖剤や酸化剤の添加により著しく抑制されたが,低濃度のS-S還元剤の添加で著しい増大を示し,SH基が関与していることが明らかになった。
(2) SH基を酸化してほとんどS-S結合だけにしたたんぱく質と,S-S結合を還元してほとんどSH基だけにしたたんぱく質それぞれからつくった油揚はほとんど伸びなかった。しかし両者を混合した場合に大きく伸び,油揚生地が伸展する場合のたんぱく質間のずれには,SH基,S-S結合交換反応が関与していることが明らかになった。
(3) 油揚の伸び率は,たんぱく質を会合しやすい条件で加熱すると著しく低下した。しかし,加熱により会合したたんはく質をメルカプトエタノールと高濃度の尿素で処理し,会合を解離させると伸び率は著しく増大した。この結果から,豆乳を加熱することによって油揚の伸び率が減少する原因は,加熱によるたんぱく質の会合であることが明らかになった。