日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
室温及び接種菌数が納豆発酵中の酵素活性と成分に及ぼす影響
秋本 隆司松本 伊左尾今井 誠一
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1993 年 40 巻 1 号 p. 83-90

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抄録

発酵室温(30, 35, 40, 45℃)と納豆菌の接種菌数(102, 104, 106/蒸熟大豆1g)を異にして納豆の発酵を行い,プロテアーゼ・γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)・レバンスクラーゼ(L.S)活性,及び窒素溶解率・同分解率,糸引き度を経時的に測定し,次の結果を得た.
1. プロテアーゼ活性は,基質pH5.7<10.0≦7.0の順に高く,かつ発酵30時間まで増加し続けた.同室温では接種菌数の多いものほど生成開始が速く,以後の活性も高かった.同一接種菌数では高い室温ほど生成開始は速かったが,以後の単位時間あたりの増加は低い室温で発酵させたものほど大きかった.
2. 窒素溶解率・同分解率は,発酵30時間まで増加し続けた.同室温では接種菌数が多いものほど増加開始が速く,以後の値も高かった.同一接種菌数では高い室温ほど増加開始が速かったが,以後の窒素溶解率・同分解率の単位時間あたりの増加は室温45℃で発酵させたものが他に比べて低かった.
3. γ-GTP活性は,発酵30時間まで増加し続けた.同室温では種菌数の多いものほど生成開始が速く,以後の活性も高かった.同一接種菌数では高い室温ほど生成開始は速かったが,以後のγ-GTP活性の単位時間あたりの増加は室温45℃が他に比べて低かった.
4. L.Sは,誘導期から対数期にあたる頃に生成が確認され,最高値を示したのち低下した.L.Sの生成開始及び最高値に達する時期は,同室温では接種菌数の少ないものほど遅く,同一接種菌数では低い室温が遅かった.また,最高値は室温45<40<30<35℃の順に高く,L.S活性の単位時間あたりの低下は高い室温で発酵させたものほど速かった.
5. 糸引き度の増加開始は室温が低く,接種菌数の少ないものほど遅かった.室温30℃で発酵させたものは発酵30時間まで増加し続け,接種菌数の多いものほど高かった.室温35~45℃で発酵させたものは,最高値に達した後,接種菌数の多いものではわずかに低下し,最高値に達するまでの時間は,室温が低く接種菌数の少ないものほど遅かった.
6. 通常の室出し時間である18~20時間でのL.Sを除く酵素活性及び成分は,同室温では接種菌数の多いものほどいずれも高く,同一接種菌数ではプロテアーゼ活性が室温30~40℃, γ-GTP活性,窒素溶解率・同分解率及び糸引き度が室温35, 40℃でそれぞれ発酵させたものが他の室温のそれより高かった.

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