抄録
本研究では,大学の様々な専門領域で試みられているESP(目的別英語)アプローチが鑑賞教育法として応用できることを示すため,英語を自由に使えないがゆえに生じる英語の象徴機能が「思考の手段」となり,効果的な美術鑑賞学習が可能になるのではないかとの仮説を立てた。次に研究方法として,中学生を対象に日本・中国の山水・花鳥画を教材とする鑑賞文作成の実践を通して,仮説を検証することを試みた。その結果,英語の象徴機能による学習上の有効性が一定認められ,中学校段階でESPの応用による鑑賞教育法の開発をすすめる指針が得られた。ただしその有効性をより高めるには,生徒の鑑賞力・英語力に応じた指導上の要件を十分に満たす必要があることも課題として明らかになった。