本研究では,障害のある人を対象とした対話型鑑賞をオンラインで実施し,参加者が対話を通してどのような解釈を創出し,どのように相互の意見やアイデアが作用するのかを明示することを目的とした。参加者は,通所施設に通う主に知的障害のある成人6 名を対象とした。鑑賞会では,広島県立美術館が所蔵する小林千古の《ミルク・メイド》を用い,同館学芸員をファシリテーターとする対話型鑑賞を行った。逐語録を作成し,各参加者による発話の相互作用を分析した結果,参加者は根拠に基づいて自身の解釈を生成でき,さらに他者の発言に対し,追加,変更,組み合わせを行うことで自身の考えを再構成できていた。本研究では,障害のある人達を含むコミュニティにアートベースの活動を持ち込み,その有効性を示すと共に, 障害観や能力観の再考を促す。