抄録
本研究の目的は,創造美育運動が日本の戦後美術教育に与えた影響について客観的に評価することである。本稿(前編)では,はじめに従来の評価に見られる特色と課題を把握するために先行研究を調査した。その結果,運動そのものに対する理解が不十分であることや運動をめぐる虚偽のイメージ(幻想としての創造美育運動)が適切な評価を妨げていたことなどが明らかになった。それらの課題をクリアするため,筆者のこれまでの研究成果をもとに運動の全体像を明確化するとともに,具体的事例を対象に虚偽のイメージが発生するメカニズムを分析した。そして以上の予備的考察をふまえ,創造美育運動がわが国の戦後美術教育に与えた影響について運動の歴史的役割の観点から考察し,そのプラス面とマイナス面を明らかにした。