抄録
これまで筆者は,関西地方を中心に画家,デザイナー,編集者などとして活躍した沢野井信夫(1916-1990)の「あそび」を活かした美術教育の構想について,その経緯をふまえ,主要著作である題材集『新しい絵あそび』(1956)と『版画のいろいろ』(1960)の分析を中心に実証的な継続研究を行ってきた。本研究では,この継続研究の成果を基礎資料とし,沢野井が師と仰ぐ画家 長谷川三郎(1906-1957)が第二次世界大戦後の復興期に刊行した美術教育に関する著作と沢野井の上記著作の内容とを比較し,その関係性をみた。その結果,沢野井の上記著作の理念,題材は,長谷川の著作である『図画教材研究』(1951)及び『新しい形の美』(1951)の内容が反映されている部分があり,長谷川の視座が沢野井の美術教育構想にみられることを確認した。