抄録
本稿の目的は,幼児後期の造形表現における模倣が他者との関係に与える影響を考察し,模倣による幼児と環境との関係の変化を明らかにすることである。そのため,年長児2 人の遊びを1 年間参与観察し分析を行った。結果3 つのことが考えられた。①幼児は,経験から導き出した表象を用いて価値ある対象の模倣を行うことで,自身のシェマを変容・発展させる。②幼児は模倣によって他者の価値観を知り,それを受け入れることで関係性を築いていく。同時に,他者からの受容によって共感的自己肯定感が育まれ,安心の中で自己表現へと向かう。③相互模倣による表現過程の繰返しは,集団における新しい価値をも創り出す可能性がある。よって,本調査における幼児後期の模倣には,関係性の中で生まれた新たな価値を共同的に表現する機能があることが考えられた。