抄録
筆者の先行研究(野網,2025)において理論的に想定されている鑑賞学習の発達段階,特に基礎的な3 段階「感受」「観察」「分析」が,実際の日本の小学校全学年の児童には,どのような反応パターンとして現れ,学年進行に伴ってどのように変化するかを実証した。大阪市立小学校203名を対象に,葛飾北斎作《冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」》を題材とした鑑賞学
習を実施し,MAXQDA24で記述回答を分析した。その結果,感情的印象から客観的観察,さらに因果関係の理解へと進む累積的構造が示された。年齢的発達だけでなく,教育的働きかけの質と継続性も鑑賞能力の発達に影響することが明らかになった。また,造形要素の統合的理解も鑑賞の深まりと連動して発達することが確認された。これらから,各学年の発達特性を踏まえた具体的な指導目標を示唆した。