抄録
生活実践の自動化や外部化が進む現代社会において,個人が身体を通して自己と環境の関係を構築する経験は次第に弱まりつつある。本研究は,このような状況に対し,工芸教育を学習者が自己の日常や世界を再構成していくプロセスに寄与する学びとし,その教育的可能性を検討する。本研究では,工芸に含まれる素材・身体などとの関係を再構成していくプロセスを「日常美学」およびティム・インゴルドの「メイキング論」の理論的枠組みから整理した。さらに工芸教育の特徴として,美的価値と実用的価値の葛藤が学習の契機となりうる点に着目し,実践研究レビューをもとに,「持続可能性」「共創」「多様性の尊重」「技術と人間性の調和」という4 つのコアを導出する。さらに,中学校美術科工芸を対象に,学習過程を支援・評価するための理論的視座を提示する。