【目的】 スイカのおいしさには食味評価における甘さが最も重要である.一般的に,甘さの客観的な指標として屈折計示度の糖度(Brix)が利用され,近年は高糖度を示す品種が多数育成されている.しかし,同じBrixでも,実際に感じる甘さは組成糖によって異なるため,Brix=甘さでないことが推定される.本研究では,これらを実証するため,スイカの甘さとおいしさについて食味評価を行い,Brixや組成別糖含量などとの関係を調査した.また,糖以外に食味評価における甘さに関与する成分として考えられるアミノ酸の分析を行った.
【方法】 延べスイカ22品種について,男女12~21名による食味評価を行い,甘さとおいしさを5段階で評価した.同時に,Brixの測定とHPLCによる組成別糖含量(果糖,ブドウ糖,およびショ糖)の分析を行った.食味評価によるおいしさと甘さ,Brix,組成別糖含量,組成別糖含量から算出した全糖含量と甘味度について,品種間差や相関を調査した.甘さの食味評価が高かった品種‘祭ばやし777’に関しては,LC-MS自動アミノ酸分析計によりアミノ酸の分析を行った.
【結果】 Brixで有意差が認められたのは3品種間のみであったのに対し,食味評価による甘味とおいしさ,組成別糖含量,全糖含量,および甘味度には広い品種間で有意差が認められた.食味評価の甘さとおいしさには強い正の相関が示された.しかし,食味評価の甘さとBrix,組成別糖含量,全糖含量,および甘味度との相関は弱かった.これらの結果から,必ずしもBrix=甘さではないことが実証された.また,食味評価の甘さには糖以外の成分の関与が示唆された.‘祭ばやし777’のアミノ酸分析では,甘味系のアミノ酸が大半を占め,食味評価の甘さやおいしさへ関与する可能性が推測された.