【目的】ペットボトル入りの緑茶飲料は、長期保存により変色することが知られている。この原因の一つに、緑茶中の緑色色素であるクロロフィルの光退色があげられる。我々はこれまでに、低濃度のアルコール水溶液や乳化剤により、クロロフィルの光退色を抑えることを明らかにした1-2)。しかし、緑茶の変色に関する詳細なメカニズムとそれを防ぐ方法についてはわかっていない。そこで、本研究では、光照射が緑茶の色とカテキン類などの成分に及ぼす影響を調べることを目的とした。
【方法】クロロフィルは、乳化剤のショ糖脂肪酸エステル(SE)を用いて溶解した。比較としてエタノールおよび界面活性剤のTriton X-100(TX)を用いた。サンプル溶液を透明のPET容器に入れ、LEDライトにて光照射し、時間ごとに色差、UV-Visおよび蛍光スペクトルの測定を行った。また、抹茶を用いた緑茶溶液を作成し、同様の実験を行た。カテキン類などの成分分析については、HPLCを用いて行った。
【結果】光照射によって、エタノールおよびTX水溶液中のクロロフィルは緑色から茶色に変色したが、SEの場合は緑色が保持されることが分かった。また、クロロフィルのソーレー帯やQ帯のピークは光照射ともに減少したが、540nmのピークは増大したことから、このピークが変色に関わると考えられた。一方、緑茶溶液中では、SEを用いても光による変色を抑えることができず、カテキン類も減少した。以上より、緑茶は光によって変色したが、クロロフィルの分解とクロロフィルとカテキン類との相互作用によって生じた成分によるものだと推察された。
Yasuda M., et al. Food Chem., 277, 463-470 (2019)
Yasuda M., et al. J. Food Chem., 86, 3033-3045 (2021)