【目的】油脂含有食品の品質管理指標である過酸化物価の分析用油脂は,一般的にジエチルエーテルを用いて抽出される.法令改正により化学物質管理が強化されたことで,食品製造企業では有機溶媒使用量削減のニーズが高まっている.そこで,演者らは有機溶媒を用いない油脂回収方法として遠心抽出法を開発した.本研究では,遠心抽出法の各工程が回収率や過酸化物価に及ぼす影響について検証した.
【方法】粉砕したイカフライを不織布製の袋に充填し,50 mLの遠沈管に入れた.遠沈管を恒温器で加温した後,遠心分離し,油脂を抽出した.油脂に食塩水を添加・混合して洗浄を行い,遠心分離によって解乳化を行った.ゲル化剤を用いて下層の洗浄水をゲル化し,上層の油脂を回収して,試料重量に対する油脂回収率を算出した.過酸化物価はクロロホルム法(基準油脂分析試験法)に準じて分析した.上記抽出方法のうち,加温条件(45~60℃,30~120分)や遠心分離条件(2 200~4 000 g,10~30分),洗浄工程とゲル化工程の有無について,回収率と過酸化物価への影響を確認した.
【結果】加温条件は,いずれの温度でも加温時間を長くすることで回収率が0.8~1.3%上昇した.過酸化物価は加温なしと比べていずれの温度,時間でも有意差は認められなかった.遠心分離条件は,同じ遠心加速度で時間を長くすると回収率が上昇したが,遠沈管破損の可能性を考慮して2 200 g,30分と設定した.また,洗浄を行うと水層によって油層の回収操作が困難になり,洗浄無しに比べて回収率が0.86%低下した.しかし,ゲル化を行うことで洗浄無しと同等の回収率となった.遠心抽出油脂に含まれる夾雑物は滴定の終点判断に影響を及ぼす可能性があるため,洗浄工程とゲル化工程を採用した.以上から,分析用油脂としての品質を保ちつつ回収率を上げることができる抽出条件を決定した.