主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】山廃仕込は, 酒母造り(酵母培養)の工程において, 自然発生する乳酸菌で醸造する方法である. 乳酸を添加する速醸仕込みに比べ, 山廃仕込の清酒は複雑で濃醇な味わいになるとされている. これまでの研究で, 山廃仕込清酒にはロイシン酸エチル,γ-6-(Z)-ドデセノラクトンなどの香気成分が多く含まれることが, 清酒製品の比較から分かってきた. 本研究では, これら香気成分の生成メカニズムの把握を目的として, 醸造中の山廃仕込清酒の香気成分変化を評価した.【方法】同じ精米歩合の米を原料とし, 同じ酒蔵で醸造された, 山廃仕込と速醸仕込の酒母と醪を経時的に採取し, 供試試料とした. 5倍希釈した試料5 mlにNaCl 1.5 gを加え, solvent-assisted stir bar sorptive extraction(SA-SBSE)により香気成分をPDMS被覆攪拌子に収着させた後, アセトンの逆抽出液100 μlをガスクロマトグラフ(GC)へ大量注入し, 質量分析計(MS)で分析した. 検出された74の香気成分のMSピークについて多変量解析を行い, 一部成分は標準添加法により定量分析した. 【結果】主成分分析の結果, 発酵に伴い香気成分が増加し, 山廃仕込と速醸仕込で増加成分に差異があることが確認された. Volcano plotでピーク面積比1.5倍以上, p<0.05の有意差が現れた香気成分を選抜し, これら成分をheatmapで表示したところ, 山廃仕込には複数のヒドロキシエステル類やγ-6-(Z)-ドデセノラクトンなどが多く生成する傾向が確認された. 定量分析結果を踏まえて詳細に解析したところ, これら香気成分は山廃仕込の酒母造り工程で顕著に増加した後, 乳酸発酵の伴わない醪工程でも増加が確認された. 酒母で生育した乳酸菌の酵素が醪工程でも残存し, 醪中の香気成分生成に影響を与えていたことが示唆された.