2026 年 26 巻 9 号 p. 349-356
グリセリンおよび尿素が皮膚角層の微細構造および水分恒常性に及ぼす影響について,高輝度放射光X線回折(XRD)を用いた研究を基に整理し,その作用機構の違いを比較した。ヒト角層を用いた湿潤・乾燥過程の時間分解XRD解析により,グリセリンおよび尿素はいずれも乾燥時における角層細胞内ソフトケラチンのコイルド・コイルαヘリックス鎖間隔の収縮を抑制し,結合水の保持を促進することが示された。特にグリセリンは尿素よりも高い抑制効果を示した。一方で,細胞間脂質の短周期ラメラ構造に着目した解析から,両ヒューメクタントは層間水の安定化を通じて脂質ラメラ構造の水分調整機能を強化することが明らかとなった。これらの結果より,グリセリンおよび尿素は,角層表面付近における約25 wt%の結合水の維持と,脂質ラメラ構造による水分制御機構の強化という二つの補完的な作用を通じて角層の水分恒常性を向上させると考えられる。特にグリセリンは,尿素に比べてより高い恒常性向上効果を有するヒューメクタントであることが示唆される。