日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第72回 (2025)
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シンポジウムB4: 国産チーズ・乳酸菌利用の新たな展開と挑戦
ホエイ有効活用を実現するブラウンチーズの開発
*三浦 孝之
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p. 41-

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抄録

【講演者の紹介】日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 准教授 略歴:2002年 酪農学園大学大学院修了, 2005年 北海道大学大学院 農学研究科 博士課程修了, 2006年 日本獣医生命科学大学 助教着任 現在に至る

ナチュラルチーズ製造時に排出されるチーズホエイの活用は乳業界にとって長年の課題であり,古くから国内外で研究および産業レベルでのあらゆる取り組みが行われてきた. 現在, 大企業ではスプレードライヤー等で粉末化し新たな食品資材にするなど一定の解決方法が定着しているが, 中小規模工場の場合は設備やコストの面から粉末化するのは現実的ではないため,大半は廃棄物として浄化槽などで処理するしかない状況である. 日本のナチュラルチーズ生産者は現在300社以上あるが,その大半が中小規模であるため,国内のチーズ生産者の殆どがチーズホエイ処理の課題に直面している状態である. チーズホエイは糖分やタンパク質などの有機物を含んだ貴重な資源であるため,廃棄するだけではなく付加価値をつけてアップサイクルする事ができれば環境的にも経営的にも有益だと考えられる. そのため,近年ではホエイドリンクなど新たな乳製品, 化粧品や石鹸など様々な製品にアップサイクルして有効活用する生産者が増えている.私達はこのアップサイクルの流れにホエイを煮詰めて作る「ブラウンチーズ」を推進しており,その理由としてSDGsの観点も大切であるが,今後あらゆる生産コストが増加していく中で,貴重な乳原料を最大限に活用して利潤を産む手段になり得ると考えたからである.ブラウンチーズはノルウェー原産の乳製品で,チーズホエイを加熱濃縮して得られた茶色い固形物である. 乳糖とミネラルによる仄かな甘みと塩味,そしてメイラード反応によってキャラメルのような優しい風味が特徴である. もしも,日本各地の中小規模生産者が高品質なナチュラルチーズと日本独自のブラウンチーズを生産販売することが出来れば、新たな食文化創生の一助にもなり得る.  そこで私たちは、日本の生産者と市場に適した日本独自のブラウンチーズの開発を行った. ノルウェーでは小規模な工房でも200 Lの大きな加熱濃縮機でブラウンチーズを製造していたが, 日本の生産者の場合, せいぜいガスコンロと鍋を使い10-30L程のホエイを根気よく煮詰めることになる.  このようにして作ったブラウンチーズは色調が白っぽくなり, 一般的なイメージとは程遠いばかりが, ホエイに含まれるミネラルの「塩味」を強く感じるものが出来上がる. これはホエイ量が少ないため加熱濃縮に要する総時間が短くなり, 色味を形成するメイラード反応が十分に進まないことが原因である.  そこで, 私達はラクターゼを用いてラクトースをグルコースおよびガラクトースに分解し、メイラード反応を促進させることで加熱時間が短くても茶色味が増した好ましい色調に仕上げることが可能になった. また、ラクターゼ処理したブラウンチーズはメイラード反応の風味と強化された甘味によってミネラル由来の塩味を抑え, あたかもチョコレートやキャラメルをイメージさせる風味になった.  消費者に広く普及するにあたって, 食経験がない新規な風味よりも, 美味しいと感じるポジティブな食経験と製品の風味がリンクすることは大変重要なことである. 開発から5年余り, これらの技術はすでに多くの国内チーズ生産者が活用し日本独自のブラウンチーズ文化が形成されつつある.

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