抄録
パルス法NMRの測定で得られる巨視的磁化のFID signalは分子構造,結晶化度,分子の絡み合い等の非常に情報量の多いデータである。そのため解析が複雑で,従来のデータ処理法ではFID signalを異なる緩和時間を持ついくつかの分布関数の和としてあらわし解析するのが一般的であった。このため十分にこの情報は活用されていなかった。前報でFID signalを直接数値微分することにより緩和スペクトルを求めるプログラムの作成を行った4)。従来の、T2緩和時間に比べ得られる情報量が圧倒的に多くなったが定性的な解析にとどまっていた。そこでこの緩和スペクトルを数理的にいくつかのピークに分離し密度関数の集合体と仮定することにより,マルチピーク解析のプログラムを作成した。スチレンブロックポリマーのマルチピーク解析を行った。またポリスチレン単体の測定密度を大きくすることにより緩和スペクトルは11個のピークに分解することができ,アニーリングの効果を定量的に捉えることができた。ただし,それぞれのピークがどのプロトンに帰属するかは今後の研究を待たねばならない。この緩和スペクトルのマルチピーク回帰による定量化により低分解能1H-Pulsed NMRが今後広く活用されると思う。