2022 年 58 巻 1 号 p. 29-35
ポリプロピレン( PP)/フィラー複合材料に無水マレイン酸変性ポリプロピレン( PP-g-MA) を添加した際の引張降伏応力( σy) について検討した。フィラーとして,同程度の平均粒子径を有する球状シリカ( SiO2)または球状アルミナ( Al2O3) を用いた。Al2O3 系複合材料は SiO2 系よりも大きな σy を示した。また,PP-g-MA とフィラーを混合した後,PP-g-MA を溶かし出した試料の熱重量測定を行った。Al2O3 上に吸着したPP-g-MA 鎖の熱分解に由来する重量減少は,SiO2 上のそれよりも顕著であった。この結果は,PP-g-MA は,SiO2 よりAl2O3 上により吸着すること,すなわち,PP-g-MA はAl2O3 とより強く相互作用することを示している。以上の結果は,高分子系複合材料にマトリックスとフィラー両方に強く相互作用する第三成分を添加することは,フィラー界面,ひいては,複合材料の力学特性を改善する有効な戦略であると結論できる。