2019 年 43 巻 1 号 p. 87-97
成人23名をADHD傾向の高低により群分けし、各群で呈示刺激の違いがStop-signal課題遂行時の行動成績およびERPにどのように影響するかを検討した。課題では、Go刺激とStop刺激の組合せが異なる2条件(クルマ刺激条件と記号刺激条件)を設定した。その結果、行動成績では、クルマ刺激条件およびADHD傾向高群における左右エラー率の上昇がみられた。ERPでは、ADHD傾向高群におけるGo-N2振幅値の低下、SST-N2振幅値の低下、およびSST-P3潜時値の有意な短縮を認めたが、刺激条件による差はみられなかった。行動成績およびGo-N2振幅値の結果から、Go刺激の弁別難易度の違いが反応制御に影響することが示唆された。また、SST-N2振幅値の結果から、刺激条件にかかわらず、ADHD傾向高群では傾向低群に対して反応抑制の困難さが示唆された。一方で、SST-P3潜時値の結果から、Go刺激とStop刺激との間の意味的関連性の操作により、ADHD傾向高群におけるStop刺激に対する反応制御処理が促進される可能性も示唆された。