2022 年 46 巻 1 号 p. 225-233
本研究では、他者と順番を交代しながら遊ぶことに困難さが見られる自閉スペクトラム症児1 名を対象に、事物の受け渡しがない遊び場面において交互交代行動の指導を行った。対象児と指導者は、机上に並べたカードを交互にめくった。また対象児と指導者のネームシートのどちらかに丸シートを貼ることで、めくる順番を明示した。 指導では、順番を正しく答えることと相手を待つことを標的行動とした。順番を正しく答えた場合に、言語賞賛とお菓子を与えた結果、正しく順番を答える行動が増加した。しかし相手を待つ行動は、「お休みする」という言語教示に加え、机上のカードをめくる直前に提示し、めくった後は撤去する手続きが必要であった。対象児が視覚的に順番を確認できることに加え、遊びの中でも順番の切り替わりを示す環境を設定し、相手を待つ行動に対しても指導を行うことで、事物の受け渡しがない遊び場面でも交互交代行動が促進されることが示された。