糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: DL-9
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レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(3)
糖尿病発症関連遺伝子
*谷澤 幸生
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抄録
糖尿病の発症関連遺伝子の解明のための研究は、高(プロ)インスリン血症の存在を手がかりとしたインスリン遺伝子異常症の発見のように生化学的異常を手がかりとする研究に始まり、インスリン分泌、インスリン作用の分子機構の解明にともなって、候補遺伝子からのアプローチへと展開している。さらに、ヒトゲノムプロジェクトと平行して、ゲノム上の位置情報から原因遺伝子へとアプローチする全ゲノム解析も取り入れられ、成果を上げつつある。これまで、糖尿病発症との関連が明確となった遺伝子の多くはMODY遺伝子を中心とした単一遺伝子異常による糖尿病についてであった。これらの病型の頻度は少ないが、原因遺伝子によってコードされる分子の膵β細胞機能における役割や、その異常による血糖調節破綻のメカニズムについて多くの示唆を与えている。
 私たちはインスリン依存に至る糖尿病と視神経萎縮を主徴とする常染色体劣性遺伝性疾患であるWolfram症候群の原因遺伝子WFS1を同定した。Wolfram症候群の患者は糖尿病と視神経萎縮の他に中枢性尿崩症、感音性難聴、神経精神症状等の多彩な症候を呈するが、典型的には、患者は10歳前後で糖尿病を発症し、膵ではβ細胞が選択的に消失する。WFS1は約100 kDaの小胞体に存在する膜蛋白をコードする。この蛋白の機能は未だ十分に解明されていないが、小胞体の陽イオンチャネルである可能性が示唆され、また、WFS1遺伝子ホモ欠損マウスの解析では進行性のβ細胞の減少とインスリン分泌低下による糖尿病の発症が示された。WFS1蛋白は小胞体ストレスによりその発現が増加する。また、進行性の膵β細胞の消失には小胞体ストレスとその応答異常によるアポトーシスの関与も示唆されている。興味深いことに、WFS1遺伝子ホモ欠損マウスでは、糖尿病の発症はマウスの遺伝的背景に強く左右される。
 今回の講演では、Wolfram症候群でのβ細胞異常のメカニズムについての研究を通して現時点で考察されることを中心に、その他の糖尿病発症関連遺伝子研究の展開についても述べたい。
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© 2005 日本糖尿病学会
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