糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: AS-2-6
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シンポジウム:心血管疾患の進展阻止を目指して:適切な治療法選択のポイント
冠動脈インターベンション(PCI)
*谷口 郁夫
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抄録
冠動脈硬化症は糖尿病者の生命予後を規定する重大な合併症の一つである.我が国における糖尿病者の増加と高齢化は冠動脈疾患の罹病率の増加を意味する.また,近年メタボリックシンドロムや食後高血糖と冠動脈硬化症の進展が注目されてきている.一方,冠動脈疾患に対する血行再建術の進歩はめざましく,ステントを含むニューデバイスはPCIの安全性を高め再狭窄率を減少させたために適応を大きく拡大させた.しかし,ステント治療においても再狭窄が大きな問題であり,特に糖尿病者のステント内再狭窄率は30%以上といわれている.また,糖尿病者は多枝複雑冠動脈病変が多くPCIよりもCABGの方が長期予後が良いことが知られており糖尿病者の初回治療ではCABGが選択されることも多い.しかし,手術侵襲を考慮すると糖尿病者においても1次的血行再建にはPCIが選択されることが多いのが現状である.PCI後の再狭窄に関してバルーンのみのPCIの再狭窄は血管のリコイル,血栓,スパズムや新生内膜の増殖などが複合して起こるが,ステント内再狭窄の主因は新生内膜の増殖であり,冠動脈硬化病変への金属挿入という刺激に対する生体反応が大きく関与する.この反応には炎症・アレルギー関連物質,高血糖や凝固線溶系因子など様々なメカニズムが関与している.この新生内膜増殖を抑制するためにステントに免疫抑制薬や制癌剤をコートした薬物溶出性ステント(drug eluting stent;DES)が開発された.その臨床研究において驚異的な再狭窄率の低さが報告され再びPCIの適応が拡大されようとしている.我が国でもようやく免疫抑制薬であるシロリムスの薬物溶出性ステント(SES)が使用可能となり急速に普及している.当初,このSESは再狭窄率がゼロという劇的な結果が報告されたが糖尿病者に対する効果については不明であった.最近、糖尿病者に対するSESのサブ解析の結果が報告されステント部位の再狭窄率は10%以下であったがインスリン治療者においてステント辺縁部を含む全体の再狭率は30%との報告がある.一方,シロリムスとは別に制癌剤であるパクリタクセルでコートしたDESでは糖尿病者に対する再狭窄の結果が異なっており,糖尿病におけるステント再狭窄のメカニズムに関して興味がもたれている.いずれにしても糖尿病者では従来のステント(bare metal stent)よりもDESの方が再狭窄率は低いために使用される頻度は増加している.ひいてはPCIの適応も拡大していく可能性もあり,我が国における糖尿病者に対するDESの長期予後およびコストベネフィットを検討する必要に迫られている. 糖尿病は冠動脈疾患の高リスクであり,多枝複雑冠動脈病変のみならず無症候性心筋虚血も多く合併するために血行再建術の適応を判断することが難しい場合が多い.また,ニューデバイスの進歩は糖尿病者へのPCIの適応を拡大してきているが,透析患者やCABG後などの高リスク患者にどこまで積極的にPCIで血行再建していくか,医療経済面を含む臨床的意義が問われている.
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© 2005 日本糖尿病学会
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