2013 年 24 巻 3 号 p. 15-25
中国の住宅市場が過熱化しており,住宅バブルへの懸念が高まっている一方,消費や投資を目的とする住宅購入の需要が増加しつづけている。中国政府は,こうした動向を警戒し,住宅市場への政策介入を試みようとしている。しかし,中国の住宅価格の合理性に関する議論が数多く出されているが,論者の立場・使用データ・分析手法等がかなり異なるので,導かれた結論も多様になっている。前稿(彭,2013)で分析した通り,不動産市場に関連する各方面の代表人物は各自の利害関係に影響され,中立な判断をする者は非常に少ない。バラバラな各種論点の信頼性は,一般市民にとって非常に判断しにくい。住宅価格動向に関する正しい世論形成そして適切な政策決定へ導くためには,客観的な立場に立って,信頼できるデータと分析手法に基づく検証を行うことが喫緊の課題となっている。 本稿では,上述した問題意識をもって,住宅価格の合理性に関する既存の分析アプローチを整理・説明した上で,中国に適用できる方法を選定し,中国の住宅市場でバブルが起きているかどうかを実際のデータを使って検証する。