抄録
日本の初期近代化は、欧米の技術や知識を日本の風土へ適用する形で進行したが、日本と欧米の風土の差異や技術の未熟さ、資金の限界、市場の未発達などの要因から挫折することも多かった。しかし北海道や内地のフロンティアにおいては、欧米式農業や牧畜が意欲的に採用され、旧来の農村景観とは異なる近代的景観が出現した。本報告では千葉県に開設された御料牧場を事例に、その景観や経営の近代性とあわせて、鉄道の発達や行楽圏の拡大とともに御料牧場が新たな桜の名所·行楽地として位置づけられてゆく過程に注目した。さらに近代的牧場景観に対する同時代の人々の眼差しを、三里塚にて後半生を送った文人の作品から検討した。御料牧場の非日本的·牧歌的景観は、人々の新たな風景に対する認識を生みだしたと考えられる。