日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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アメリカ合衆国マサチューセッツ州レキシントンの土地利用
*伊藤 悟根田 克彦
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p. 127

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抄録

 今日北アメリカの大都市圏では、エッジ・シティさらにはエッジレス・シティという言葉の出現に象徴されるように、都市機能の郊外化、多核化の進行が著しい。本研究は、このような大都市圏の構造変容のなかで、既存の小中心地が、現在どのように変質しつつあるかについて関心を寄せるものである。 調査対象としたマサチューセッツ州レキシントンは、ボストン大都市圏のほぼ中間地帯に位置し、2000年現在の人口数はほぼ3万である。既に今春の大会では、レキシントンの都市計画について、2002年11月に現地収集した資料等から検討を試みたが(伊藤・根田 2003)、今回は2003年6月に行った土地利用の実態調査から報告する。 まず、レキシントン全体の土地利用について概観すると、旧鉄道駅前に発達したレキシントン・センターと、その周辺のコンパクトな住宅地、さらに外側に広がる低密度な住宅地という基本的パターンがうかがわれ、それはこの町の成長の歴史を反映している。また、高速道路のインターチェンジ付近には近年、技術・専門サービスを主体とするオフィスが進出し、他方、近隣型の商業サブセンターも各地に点在する。 そこで4カ所を選定し、土地利用の実態を詳細に調査した。調査地区はレキシントン・センターとその周辺(A)、サブセンター2カ所(B1とB2)、および縁辺部にあるインターチェンジ付近の開発地区(C)である。実態調査の結果、各地区について次のような様相が把握できた。 (A) レキシントン・センターでは、1980年代に立案された整備計画によって集合店舗化が進み、そこにはレストランや衣料品など主に買回品店の集積がみられる。それを取り囲むコンパクトな住宅地は、ボストンへの鉄道開通によって開発されたものであるが、そのなかの一部の住宅には、 レキシントンの知名度と利便性を背景に、大邸宅化(mansionalization)するものもあった。 (B1) サブセンターの1つであるイースト・レキシントンは、レキシントン・センターと同様、鉄道駅前に発達した中心地であり、従前は同センターに次ぐ役割を担っていたが、1978年の鉄道廃止以降その地位を低下させ、現在はロードサイド型の商業地に変容している。 (B2) いま一つの調査対象としたサブセンターは、レキシントン・センターから北西200mほどに位置するが、そこにはスーパーマーケットとガソリンスタンド、喫茶店などの商業機能ともに、弁護士、医者やシステム・デベロッパーなどの、いわゆるスモール・オフィスを収容する建物が現在集積している。 (C) レキシントン南縁の高速道路インターチェンジ付近では幾つもの大規模なオフィスが立地する。それらはボストンから遠心的に移動してきたものが多く、道路に直接面するのではなく、ある程度の距離をおいて位置し、それぞれが広大な駐車場と緑地を有する。 以上は今回の調査から得られた知見の骨子であり、ポスター発表の際には各調査地区の土地利用図等を提示しながら詳細を報告する。<文献> 伊藤悟・根田克彦 2003.アメリカ合衆国マサチューセッツ州レキシントンの都市計画.日本地理学会発表要旨集 63:152.

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