日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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環境教育のフィールドとしての瀬戸内海
*淺野 敏久
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p. 17

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抄録
1.はじめに この報告はシンポジウム(瀬戸内海における「観光環境」の維持と再生)における報告のひとつである。本報告の趣旨は,環境教育のフィールドとして瀬戸内海はどのように利用されているのか,あるいはどのような利用可能性があるのかについて,いくつかの調査結果等を紹介しつつ検討し,シンポジウムにおける話題提供を行うことである。このシンポジウムのタイトルと環境教育は直接結びつかないが,テーマを「持続可能な地域づくりのひとつの方向として観光をとらえ,この意味での観光が成立する環境の維持と再生について考えること」と読み替えれば,環境保全はそもそもの前提となり,環境教育は観光アクティビティのメニューとして重要なキーワードになる。2.瀬戸内海の環境保全における環境教育の位置づけ 環境教育が何を目指すのかという理念は,実際の現場でどの程度意識され,また尊重されているのだろうか。一方,瀬戸内海では,戦後並びに高度成長期の急速な環境悪化に直面し制定された瀬戸内海環境保全特別措置法において,環境教育・環境学習が環境対策の柱のひとつとしてうたわれている。瀬戸内海の観光環境を検討する前に,そもそも,その前提といえる環境保全と環境教育は瀬戸内地域においてどのような実践状況にあるのだろうか。3.市町村の取り組みの現状 その第一歩として沿岸市町村を対象としたアンケート調査を実施した。回収状況が悪く,おおまかな傾向を把握するにとどまってしまったが,報告ではその内容を紹介する。一言でいうなら,現場で行われていることは環境教育の理念に示される達成目標からはほど遠いところにあるということである。4.いくつかの事例紹介と今後の課題 次に事例として広島県の宮島と三原市,香川県の豊島・直島の取り組みについて紹介する。各事例間に関連はなく,報告者がたまたま知り得た範囲での事例である。 これらの事例を導入として,ヒューマンスケールからみれば広すぎる「瀬戸内海」をひとつの存在としてとらえた環境保全や環境教育,あるいは観光環境の維持・再生を実現していくために,何が必要なのかという課題について話題提供する。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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