日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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中国ハニ族の棚田の現状
*松岡 正子
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p. 64

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抄録
1.はじめに 中華人民共和国には、総人口の約92%を占める漢族と55の少数民族がいる。このうち民族の坩堝といわれる雲南省には25もの少数民族がいる。ハニ族は、雲南省でイ族、ペー族につぐ第3位の人口をもつ民族集団で、みごとな棚田をもつことで知られている。本発表では、ハニ族が集中して居住する紅河ハニ族イ族自治州元陽県の集落を事例として、棚田のある集落の特徴的な景観とくらしを紹介し、民俗村に指定されたことで、棚田や伝統文化を保持しながら貧困から脱しようとする箐口村の変化を報告する。2.ハニ族の概況  ハニ族は、総人口が143万9673人(2000年)で、ベトナムやタイと国境を接する雲南省南西部の紅河と瀾滄河が流れる山間部に居住する。このうち紅河流域には人口の約70%が集中し、瀾滄江流域のシーサンパンナ・タイ族自治州にも分布する。また一部は国境を越えて居住し、タイやミャンマ_-_、ラオスではアカ族、ベトナムではハニ族と呼ばれる。ハニ語は漢・チベット語族チベット・ミャンマ_-_語群イ語系に属し、3つの方言に大別されそれぞれ自称が異なるが、人民共和国下では人口の約75%を占めるハニが民族名称となった。固有の文字はない。伝説によれば、商王朝(BC1000年?)の西北遊牧民「羌」の末裔で、南下して、漢代には雲南省南部にいたったという。生業は、紅河流域では古くから山腹斜面の棚田で水稲耕作を行ったが、シーサンパンナでは近年まで焼畑によって陸稲を栽培した。また清代になってシーサンパンナを中心に茶栽培が盛んになり、普洱産のプーアル茶が有名である。                                               3.元陽県箐口村の概況と集落の景観 元陽県は、総人口が33万5290人、民族構成はハニ族52%、イ族23%、漢族14%、タイ族5%、その他で、海抜高度600m以下の河谷にタイ族、800m前後にチワン族、1000_から_1600mにイ族と漢族、1400_から_1800mにハニ族、1600_から_1800mにミャオ、ヤオ族が棲み分けを行う。年間平均気温は16.4度、年間降水量は1417.6ミリで、総面積2292kmのうち森林が44%、耕地が18%、牧草地が10%を占める。 箐口村は、総人口849人、総戸数168戸、李・張・芦の3姓がほほ3分の1ずつを占め、住民はみなハニ族である。集落の景観には一定の法則性がある。住居は山腹斜面の高い処に集中しており、周りに菜園がある。背後には村の神山があり、集落の入り口近くに神樹を祀る神林がある。棚田は集落から下方にむかって広がる。集落を囲む神山と棚田の境界には「寨門」があり、人間界と精霊界が分けられている。水源は豊かで、山から流れだす幾つもの渓流が集落内をめぐって水車や水場に利用され、棚田には用水路で水が引かれている。箐口村は2001年に伝統文化保存のために民俗村に指定され、政府から100万元の資金を受けて石畳の道路や「蘑?房」、水車小屋、祭祀場、民俗展示室などを整備した。出稼ぎだけが現金収入源であった住民にとって、民俗村建設のための工事や観光客用の食堂の開設、みやげ物の販売は就業機会や現金収入の増加を意味しており、この変化を歓迎している。 本発表では、箐口村が民俗村になる前の1999年と指定後の2002年の現地での調査資料をもとに、村の変化を報告する。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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