日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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里山における植生管理と土壌水との関係について
*篠村 善徳
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p. 66

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抄録
 本発表では,都市近郊の比較的大規模な里山(二次林)において,人為的な管理の有無が,土壌や湧水水質にどのような変化を及ぼすのかを集水域単位でおさえることを目的とし,里山の管理に対する評価のための一助とした. 東京近郊の図師・小野路地域を対象にヒアリングおよび簡易的な植生調査を行った結果,管理様式は管理の強度によって5段階に分類された.そこで,毎年下草刈りおよび低木伐採の管理がおこなわれている谷戸と長年放棄されている谷戸との土壌断面土壌水を比較した. その結果,土壌断面においてA層の厚さには明確な差異は認められなかったが,A0層は頂部斜面で放棄された谷戸の方が厚かった.また,土壌水および土壌抽出水の水質は,A層について管理されている谷戸の土壌の方が,放棄されている谷戸の土壌よりもECおよびそれを規定するNO3- 濃度,さらにNO3- と相関関係が高いMg2+・K+・Ca2+などの成分は濃度が低い.A0層厚が薄いことにみられるように管理されている谷戸の表層は,定期的に下草が取り除かれることで,長年にわたって落葉落枝が堆積して放棄されている谷戸に比べ,分解と無機化によって生じるNO3- が相対的に蓄積しにくいためと考えられる.谷底部の土壌水と湧水とを比較すると,NO3- 濃度は湧水の方が大幅に低く,その他の成分は湧水の方が濃度が高い.これはNO3- については嫌気状態で脱窒作用をうけた結果と思われる.また,他の成分が増加したのは,土壌水のほかに,地質の影響を受けた水が混ざって形成されたためと思われる.
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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