日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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勝連トラバーチン舗装工のヒートアイランド現象抑制効果の定量化研究
*一ノ瀬 俊明新津 潔小野塚 孝神野 充輝
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p. 104

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抄録
沖縄県勝連町周辺で豊富に算出する有孔虫石灰岩を素材として、「勝連トラバーチン」という特殊舗装材料が開発・生産されている。コンクリートなどと比較した場合の日射による表面温度上昇に対する抑制効果が指摘されていたが、その効果のメカニズム解明を含め、効果の定量的評価が課題となっていた。都市の暑熱対策として、トラバーチンを都心における歩行空間の舗装材料として実用化するためには、このような調査研究が必要である。国立環境研究所(つくば市小野川16_-_2)敷地南縁の日当たりのよい平地(草地)を整地して、トラバーチン(5m四方)及び対比実験用のコンクリートブロックを敷設し、躯体内温度、躯体底面熱流量、躯体表面の放射特性などを両者で比較するための観測実験を、気象観測とともに実施した。また、表面温度上昇に対する抑制効果のメカニズム解明を目的として、アルベドをトラバーチンに近づけるため、コンクリートの表面に高反射性塗料を塗布しての対比実験を行った。コンクリートとトラバーチンの比較実験は、2003年7月10日0:00_から_2003年9月8日23:00に実施された。日雨量0mm以下、毎時日射量最大値500W/m2以上、毎時日射量日積算値4000W/m2以上という条件で、全61日中18日が晴天日として選択された。さらに、観測場を代表する気象要素を観測するため、DAVIS社製気象計を2種類の躯体の近傍に設置した。躯体内温度の極大・極小値はそれぞれ、コンクリートの1cm深で40.8℃、24.5℃であり、同4cm深では40.1℃、24.8℃であった。一方トラバーチンではそれぞれ、1cm深で34.2℃、21.1℃であり、4cm深では32.6℃、21.4℃であった(図1)。また、トラバーチンでの日変化の振幅はコンクリートに比べ小さい。2深度間の温度差から読み取れる躯体内熱流の向きは、コンクリートが7_から_16時に下向きであるのに対し、トラバーチンでは7_から_17時に下向きとなっていた。図2によれば、躯体底面に向けて日射を受けた躯体表面からの熱が伝わり、8時過ぎより躯体底面から直下の土壌に伝わる熱フラックス(G)は正に転ずる。19時過ぎに躯体底面温度が土壌の温度を下回るまで低下し、熱フラックスは再び負に戻る。一方トラバーチンでは日変化の振幅は非常に小さい。日中も躯体内温度の上昇は小さく、躯体底面から直下の土壌に伝わる熱フラックスは小さい。以上より、コンクリートでは躯体直下の土壌にも大きな蓄熱があり、夜間はその熱が再び躯体に供給されると考えられる。一方、コンクリート表面のアルベドをトラバーチンのそれに近づけた条件での対比実験を、2003年11月1日0:00_から_2003年11月26日23:00に実施した。夏季の事例で確認された両者の関係は、そのオーダーが変わりこそすれ基本的に確認されたことから、トラバーチンの熱的な特性は、その高いアルベドのみに由来するのではなく、比熱などの熱物性値にも大きく関係していることが示唆された。本研究は、株式会社三柱よりの研究奨励寄附金研究「勝連トラバーチン舗装工のヒートアイランド現象抑制効果の定量化研究」(代表・一ノ瀬俊明)の一部である。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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