抄録
1、 はじめに 本報告では、日常の個人生活の結果のあとを検討する手段としてのメンタルマップ分析の成果と課題を展望する。新高等学校学習指導要領では個人空間認知動向の予測の可否について、地歴科「地理A・B」の各教科書では取り上げられる。内容的には各社独自の設定展開がとりおこなわれているものが発行・使用され2年が経過してきている。本報告は、新課程実施後の2年間で、筆者がこの間試行錯誤した結果を活かした教材化改革・進展へ向けてのあり方を若干考察したい。 新教育課程では「地理A・B」ともに、略地図・メンタルマップが学習項目として取り上げられる。学習者個々に、生活場での生育歴ごとによって様々なメンタルマップが、すでに、現実の生活空間の把握、認識などの結果として定着している。 授業実践結果から報告者は、すでに保持された個々の学習者のメンタルマップにおける選好性の傾向を分析・類型化し、その特性を検討し、より好ましい世界空間認識の育成方法を検討するためのあり方の1例を展望してみた。まず、報告者が2002年度に岡山県内で報告した旧課程公民科「現代杜会」における地図学習の取り組みと効果を検討したものを見てゆきたい。いわゆるメンタルマップではかならずしもないが、略地図を用いた授業づくりの効用を検討したものである(岡山県高等学校地歴公民部会公民分科会第2回研究協議会:2003,2,3:於県立岡山朝日高校:「公民」科教育におけるメンタルマップなどを利用した評価の試み)。2、研究の目的・方法・今日課題1:研究設定テーマ等 4次元空間における空間認知、メンタルマップ(認知地図)法を用いた新学習指導要領対応における評価方法に関する試案を実施・試行錯誤してみることをめざす。2:検討試案検討例1) メンタルマップ(認知地図)的手法の新課程評価例への対応の是非について。→「現代杜会」へどこまで対応・応用可能か。→公民科の他の「政経」・「倫理」への対応は・応用はどうか。→地歴・公民科「世界史A・B」・「日本史A・B」・「地理A・B」への対応・応用はどうか。2) ワークシートの1例としてのメンタルマップ(認知地図)的ワークシートの可溶性・可能性はどうか。地歴・公民科すべてに対応できるか、できぬかその是非について。3:まとめ。 本件の特性・可溶性などについてはかなり有効といえるのではないか。新課程用の教科書・教科書対応資料・教科書対応作業ノートなどでは、「地理A・B」、「現代杜会」では多様な取り上げ方、記述利用等がおこなわれているものも多くなってきている。4:具体案事例 報告者はメンタルマップ(認知地図)をもちいた授業改善検討例の課題と展望については、すでに(社会科教育現行学習指導要領下の「杜会科」(高等学校中心)の解体と現場教員の社会科教科目意識について…『現代杜会』・『世界史』を中心として…1990年度教育研究全国集会発表レポート:束京・埼玉大会)において取り組み、計画事例をすでに発表している。以来10余年を経過した今日、新学習指導要領の実施にともなって登場したメンタルマップ・略地図学習では、多くの先学の方々の研究事例・授業実践例が実ったケースである。現代的なグローバリジェーションの時代的生活場では、今日の情報化社会が与える諸事象等をもうけた学習者の世界認識の結果の形成とその歪み是正を展望した観点を活かすことの大切さが求められた教材化のあり方の1つ1つがグローカルな生活をおくるためにも、今問われるともいえる。