日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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島弧の変形と変動地形学
*池田 安隆
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p. 42

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抄録
鮮新世_から_第四紀における地表変形の速度は日本列島の内部で一様ではない.東北日本弧では内帯,その中でも特に,羽越褶曲帯から北部フォッサマグナに至る地帯に変形が集中する. ここには,異常に厚い(最大_から_10 km)堆積層で充填されたトラフ(羽越堆積盆)が存在する.このトラフは,日本海拡大時のリフティングに伴って,地殻の上部数km _から_10 kmが欠損することにより形成されたと推定される.このような地質構造の大枠は,中新世前期_から_中期に起った日本海の拡大に伴って生じたものであり,現在のテクトニクスはこれらの構造に強く支配されているらしい(佐藤・池田,1999).鮮新世以降,東北日本は圧縮場に転じ,日本海拡大時に形成された正断層は,逆断層となって再活動をはじめた(第1図).鮮新世から現在までの総短縮量は高々 20 km 程である.羽越褶曲帯の(地質学的時間スケールでの)水平短縮速度は,4-8 mm/yr程度でる.これ以外の活断層による水平短縮の寄与を見込んでも,東北日本弧全体の水平短縮速度は高々10 mm/yr程度であり,測地学的に観測される水平短縮速度の1/5_から_1/10の値である.
 東北日本弧では,上記のような活断層に直接起因する波長数10km以下の短波長の地表変形とは別に,島弧全体をかさ上げするような広域隆起が存在する.Tajikara (2004, Dr. Thesis, Univ. Tokyo)は,河成段丘の比高から東北日本内陸部の隆起速度分布を求めた.その結果,東北日本弧が全体として0.22_から_0.36 mm/yrの速度で広域的に隆起していることを明らかにした.この隆起の主たる原因は地殻水平短縮に伴う地殻厚化によって生じるisostaticな隆起である可能性が高い.Tajikara (2004)は,東北日本弧が全体としてisostaticに釣り合っていると仮定し,広域隆起速度から水平短縮速度を推定した.その際撹乱要因として,削剥によるunloading,火山噴出物の堆積によるloading,マグマ底付け作用による地殻厚化の寄与を見積もった.その結果,水平短縮速度は東北日本弧全体で6_から_8 mm/yr以下であることが分かった.この値は,活断層のすべり速度から求めた値と調和的である.
 以上の結果から,東北日本弧ではプレート収束速度のおおよそ10_%_が永久歪みとして蓄積していると考えられる.
図1.高田沖から松之山,十日町市水沢を経て六日町盆地南部に至る地質断面と推定深部地下構造.天然ガス工業界(1969)による地質断面図に推定される断層位置(太実線および太破線)を加筆してある.基盤岩(Pz/Gr)中に想定される水平なデタッチメント断層は,中新世初期にリフトベースンを形成した正断層が逆断層として再活動したものと考える.魚沼丘陵の地下にある楔状の基盤岩は,デタッチメント断層の上盤先端部に形成された roll-over 背斜を起源とする.テクトニックインバージョンを起こしたデタッチメント断層は,リフトベースンを埋積した新第三系の基底部(七谷層中)に沿って前方へ伝播していったと考えられる.信濃川付近を軸とする魚沼層(Un)の深い堆積盆の形成と,松之山周辺の構造的高まりの形成は,七谷層(Nt)中に落差 2 km 程度の ramp が存在すると仮定することで合理的に説明できる.この部分でのデタッチメント断層の総すべり量は,約 12 km である.六日町断層は,基盤岩上盤側の roll-over 背斜上に堆積した新第三系の基底部に,層面すべり断層として発生した back thrust である.この断層の発生時期は新しく,魚沼層堆積後である.六日町断層の総すべり量は 3-6 km に達する.(池田ほか,2002,「第四紀逆断層アトラス」,東京大学出版会).
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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