日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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南西諸島から採取した完新世化石サンゴ、貝化石および石灰質砂岩の同位体補正年代
*小元 久仁夫
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p. 71

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抄録
1. 研究目的 更新世後期における地形形成年代や地形発達史を明らかにする研究や、気候および植生変化などの古環境を復元する研究において、多くの放射性炭素14C)年代が使用されてきた。
 Stuiver and Polach (1977)は、正確な14C年代を得るために安定同位体比(δ13C)にもとづく同位体分別補正(以後同位体補正とよぶ)や、Reservoir effect の補正が必要なことを提唱した。とりわけ海洋生物を試料とした場合、これらの補正は必須である。それ以来、多くの海外の14C年代測定機関では、同位体補正年代が公表されてきた。しかしながらわが国では、西暦2000年以前に同位体補正年代を使用した研究例はまれであった。
 小元は南西諸島からビーチロック試料を採取し、14C年代測定を行い、それらの形成年代や海水準変動を逐次報告してきた(小元,1992_から_Omoto, 2004a, 2004bほか多数)。ビーチロックは、化石サンゴや貝化石を含み14C年代測定に適している。またこれらの試料の安定同位体比の分析結果から、それぞれの同位体補正年代が得られる。
 これまでに分析した329件のデータを島別および試料別に整理すれば、南西諸島から採取され14C年代測定された未補正データを補正する上で、貴重な指標が得られる。ここに統計処理の結果を報告する。
2. 研究方法(1)14C年代測定を行った試料の安定同位体比(δ13C)を測定する。
(2)安定同位体比から島ごと、試料の種類別の同位体補正年代をもとめる。
(3)島ごと、および試料の種別ごとの同位体補正年代(最大値、最低値、平均値)の特長を検討する。
3. 研究成果 奄美大島から与那国島に至る16島から329試料を採取し、安定同位体比を分析した。その結果、次のような知見が得られた。
(1)329試料の同位体補正年代の平均値は、420年から480年(全島平均値は453年)までの範囲にあり、平均値は島により異なる。
(2)同位体補正年代の最大値および最低値は、573年から312年までの範囲にあり、島により異なる。
(3)化石サンゴ試料90個の同位体補正年代は、532年_から_312年(平均430年)である。
(4)貝化石試料117個の同位体補正年代は、573年_から_325年(平均463年)である。
(5)石灰質砂岩122個の同位体補正年代は、573年_から_357年(平均461年)である。
(6)試料を採取した16島中、補正年代差が最大の島は、沖縄島と伊江島であり、その値は196年に達している。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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