日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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東北日本弧におけるGPSによる東西短縮速度分布と活断層分布との比較
*福田 浩之須貝 俊彦
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p. 79

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抄録
はじめに
 典型的な島弧である東北日本弧は、太平洋プレートの沈み込みによる東西圧縮場にあり、活構造や地質構造など多くの地学現象の分布に島弧内での地域差が見られる。本研究では、東北日本弧を対象として、国土地理院が設置した電子基準点(GEONET)のGPS連続観測データを用いて東西短縮速度を計算し、速度分布の空間特性を明らかにするとともに、活断層分布との比較を行った。
研究方法
 国土地理院提供の元データ(1996年_から_2003年)を、測地系変換プログラムtrns97(国土地理院 飛田幹夫氏作成)を用いてITRF97のXYZ表示からWGS87の度分表示に変換し、その後水平変動を見るため地心直交座標系をローカルな平面直交座標系に変換した。観測点の変位速度は、最小2乗法を用いて座標値の時間変化を時間の1次関数で近似し、その傾きを推定して求めた。求められた各観測点の水平変動速度はGISソフトTNT-mips6.8を用いてGIS上に表示し、解析を行った。
考察
 新潟県大潟(GEONET:950241)を基準とした相対水平速度分布図(Fig.1)を見ると、ベクトルの向きは全体的に西向きで且つ日本海溝から遠ざかるにつれて小さくなっている。これは太平洋プレートの沈み込みによるプレート間カップリングによって生じる内部変形を表していると考えられる【諏訪ほか(2004)】。
 相対水平変動速度から東西成分のみを抜き出し、その値を最小曲率法を用いて2.5km×2.5kmのメッシュに補間して等値線を作成し、さらにその東西方向の差分(東西短縮速度)をラスターマップにして重ねて表示した(Fig.2)。東西短縮速度が大きい、変動の集中帯が日本海溝に平行して3列存在することが明らかとなり、さらに西側および中央の変動帯上には活断層が多く分布していることが分かった。このうち、西側の変動帯は日本海東縁変動帯と呼ばれ、この短縮変動の原動力は小林(1983)、中村(1984)によれば日本海側のユーラシアプレートの北米プレート下への沈み込みによって生じたと考えられる。また、中央の変動帯では、活断層の近くで短縮が顕著で、そのため短縮速度に南北のコントラストが見られる。他方、東側の変動帯はブーゲー異常の急変線と調和的なことから、地質構造の違いによって生じたものであると考えられる。
 中央の変動帯に着目し、水平速度の東西成分の東西断面を見ると(Fig.3)、活断層のある側線:A-A'では、活断層の上盤側にあたる奥羽山脈で速度が急減し横手盆地では減少しないという東西のコントラストが存在するのに対し、活断層のない側線:B-B'では変動速度は一様に減少している。これは、活断層の存在する地域では活断層に歪みが蓄積し、非弾性変動=内陸直下型地震によって歪みが解消されることを示唆する。さらに、分解能をあげればGPSデータから地震サイクルにおける歪みの蓄積過程と蓄積領域の検出が可能であることが分かった。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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