抄録
1. はじめに
丘陵地谷頭部内の谷頭凹地(田村(1974, 1996, 2001))の土層が持つ流出調節効果ならびに部分寄与域の変動を明らかにするため,谷頭内で簡易貫入試験を行い,水流発生点(Stream-head)付近において土層別の流出,圧力水頭,地下水位等を観測した。
2. 土層構成
谷頭凹地上部から谷心線に沿う1方向と地表の形態と無関係な2方向にB層・C層の厚い部分が存在した。谷頭凹地下部の浅い溝状部は,B層・C層の大半が削られた後,AB層で再埋積されたと判断され,この構造がパイプと亀裂の形成に影響していると考えられる。
3. 流出量と流出発生位置
4ヶ月間の流出の内訳は,谷頭凹地下部の地表の不特定箇所で発生するQs19.4%,樹木下の地表面に形成されたパイプP3からの流出QP316.5%,水路頭中の亀裂の多い基岩にあるパイプP1,パイプP2,ならびに亀裂Crからの流出QR61.5%であり,パイプと亀裂からの流出が全体の78%を占める。1時間単位の先行降雨指数から,各層からの流出開始条件の推測が可能であった。Qsの発生時はQRのみの時に比べ,部分寄与域が増大していることを示す。
4. 地中水の経路
考えられる流出までの地中水の経路を,図1に示す。1:B層・C層に浸透しないまま谷頭凹地下部の浅い溝状部で透水性の高いAB層を降下浸透し,亀裂の多い基岩中に流下した水,2:B層・C層に浸透したうえで再びAB層に流出し,その後は1:と同様に流下した水,3:亀裂の多い基岩に浸透した後に水路頭方面に移動して流出した水に分けられる。通常は強い降雨イベントほど地下水位は上がり,流出への部分寄与域が増大して1:が顕著になるが,土壌が乾燥して流出がほとんどない夏期も存在した。