抄録
日本海低気圧に伴う寒冷前線は、本州を通過する際に地形の影響を受ける。そのため、関東地方では風、気温、降水が複雑に変化する。このことは天気予報を難しくする原因となっている。本研究では、前線通過時の降水パターンに着目して事例を全国的に雨が降る一般型、北陸地方と関東東海上で雨が降るが関東平野で雨が降らないジャンプ型、北陸地方でのみ雨が降る北陸型、それ以外の4つの型に分類し、それぞれの型の出現時の気象場を把握する。さらには、数値実験により降水帯のメカニズムを解明する。
北陸型出現時には、寒気の層が薄く、上層は安定成層を形成している。北西風が山岳にぶつかり、地形による強制上昇によって北陸地方にのみ降水がもたらされることがわかった。
ジャンプ型出現時は、関東平野内陸部で風が弱く、山岳にさえぎられるため水蒸気が供給されにくい。前線が山岳を越える際、伊勢湾から抜けた強風が湿った南西風と東海上で強い収束線(沿岸前線)を作る。以上のようなメカニズムにより北陸地方から山岳域で雨が降った後、関東で降水をもたらさず、東海上で再び降水をもたらすことがわかった。