日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: 525
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安政2年における盛岡藩の蝦夷地持場の見分に関する予察
「松前持場見分帳(十和田市立新渡戸記念館所蔵 新渡戸家文書)」の分析から
*村上 由佳中尾 千明
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抄録
本報告は,盛岡藩が安政2 (1855) 年2月に蝦夷地を松前藩から箱館奉行の所管に移し,3月に盛岡藩を含む東北諸藩に蝦夷地警衛が命ぜられることになった時期を対象とする.なお,ここで使用している史料は『松前持場見分帳』(十和田市立新渡戸記念館所蔵)である. 盛岡藩は安政2年に,箱館及び東蝦夷地の見分のために藩士を蝦夷地に派遣している.そのときの見分記録が『松前持場見分帳』として十和田市立新渡戸記念館に残されている.『松前持場見分帳』は,安政2年4月25日に表目付(後に蝦夷地附御留主居)上山半右衛門と勘定奉行新渡戸十次郎が,「箱館并東蝦夷地御持場所為見分箱館江渡海被 仰付」と,箱館と東蝦夷地の「持場」を見分するために,箱館に渡海を命ぜられるところから書き始められている.そして箱館と東蝦夷地で「持場」の見分を行い,見分終了後,見分結果に基づいて箱館奉行所に伺書を提出している.伺書には,地形などを考慮し,元陣屋・出張陣屋や台場建設場所,勤番人数などについての意見が記載されている.本研究ではこの『松前持場見分帳』を使用し,見分地や台場等の建設予定地として提言されている場所を地図上にプロットし,その選定理由を『松前持場見分帳』から読み解き,盛岡藩の蝦夷地警衛構想を明らかにする一助としたい.  なお本報告は,日本学術振興会の科学研究費助成金(基礎研究(B)17320132(研究代表者:戸祭由美夫)「北海道・東北各地所蔵の幕末蝦夷地陣屋・囲郭に関する絵地図の調査及びその比較研究」)の成果の一部である.  本報告にあたっては,十和田市立新渡戸記念館館長の新渡戸明氏に史料の使用のご許可を賜りました.また,調査時には新渡戸記念館の皆様に大変お世話になりました.記して感謝いたします.
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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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