日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P817
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南西諸島生物多様性優先保全地域(BPA)におけるサンゴ礁浅海域での自然地理的ユニット(PGU)の応用
*中井 達郎柴田 剛山野 博哉安村 茂樹
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抄録
南西諸島はWWFグローバル200エコリージョンのひとつに位置づけられ、現在WWFジャパンは、陸域、海域、淡水域を含む南西諸島全域について生物多様性優先保全地域(BPA)の評価作業が行なっている。その評価方法は、レッドデータ・ブック(鹿児島県版・沖縄県版)に記載された生物種の分布を基礎データ(生物群重要地域TPA)とし、それに自然度の高い森林やサンゴ群集といったハビタットあるいは集水域や標高といった地形・環境条件を加味して、GIS上で評価を行っている。
そのうち海域は、特にサンゴ礁をはじめとする浅海域を主対象として実施している。まず(1)貝類、(2)甲殻類、(3)魚類、(4)爬虫類、(5)鳥類、(6)哺乳類の各分類群についてのTPAと、(1)サンゴ群集(礁斜面)、(2)サンゴ群集(礁原)、(3)藻場、(4)マングローブをハビタット・タイプとして抽出し、マッピングした。なお、サンゴ群集については、日本サンゴ礁学会保全委員会との共同で行われた重要サンゴ群集域のデータを活用した。その上である地域単位に上記のTPAあるいはハビタット・タイプの出現数で評価するが、その境界線に生態学的意味を持たせることが必要となる。単純な重ね合わせやメッシュ評価では地域生態系の反映が困難である。その際、陸上の場合は、集水域を基本単位とすることが有効で、本プロジェクトでも陸域については集水域を考慮している。そこで、海域については自然地理的ユニット(PGU)を応用することとした。中井(1998,2007a,b)は、裾礁礁原上において、その生態学的に意味を持つ空間構造としてPGUの重要性を指摘し、サンゴ礁保全への応用の有効性を示唆した。PGUは礁嶺、水路、岬などの地形によって区分される単位で、それは生物分布や行動に影響を与える海水運動パターンと整合的である。陸上の集水域に類似する半閉鎖的系と考えられる。本研究においては、空中写真・衛星画像などから南西諸島の全島についてPGUを判読し、各PGUごとにTPAとハビタット・タイプの出現数をカウントした。その結果から海域のBPAを評価した。また、湾はそれ自体がひとつのPGUと考えられることから(堀越, 1979,a,b)、複数のPGUを含む湾は、スーパーユニットとして評価した。
 一方で、陸域BPAの選定にあたっては、流域境界も使用した。海域のPGU境界と陸域の流域境界を合わせて示すことによって、陸域と海域を合わせた統合的な優先保全地域の抽出が可能となる。これは、統合的沿岸管理計画(ICZM)を検討する上でも非常に有効な資料となるものと考える。
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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