日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 110
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琵琶湖湖岸における最近の20年間の地形環境の変遷
*辰己 勝角 克明東 善広西野 麻知子中島 拓男
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抄録

1.はじめに  本発表では、2007年度より開始した滋賀県琵琶湖環境科学研究センターのプロジェクト研究「湖岸生態系の保全・修復および管理に関する研究」のうち「環境変遷調査(土地条件)」の成果の一部を報告する。琵琶湖湖岸の土地条件の調査は、1989・1990年に滋賀県琵琶湖研究所(当時)のもとで行われ、筆者も調査と報告書の作成に関わった。2007年度の調査は、前回の調査以降の20年間の湖岸の変化を調べ、変化の要因や、現在の湖岸の実態を明らかにすることであった。ここでは、今回の現地調査の結果から、特に、近年その改変が著しい南湖沿岸を中心に報告する。
2.研究方法  湖岸地形の類型については20年前の報告書で示されているものをベースとした。「山地部」と「平野部」に二分したのち、_丸1_ 第1段階として、「山地部」は山地ごとの区分、「平野部」は平野の形成に関与した河川ごとの区分を行った。_丸2_ 第2段階は「山地部」は山地と崖錐に区分、「平野部」は現河口部、その他の湖岸、人工湖岸に区分した。_丸3_ 第3段階では「山地部」は各山地と各崖錐に区分、「平野部」は三角州、氾濫原、扇状地などの平野の特性と、湖岸での砂堆の有無、デルタの形状、人工湖岸などで区分し、湖底地形も考慮した。この結果湖岸は13の類型に分けられた。 今回、当時と湖岸がどのように変化したか調べるため、全域を踏査した。その成果は湖岸地区の5,000分の1地形図110枚に湖岸の状況を記入した。あわせて、前回使った100mごとのポイントをもとにした、湖岸の現況を区分図にまとめた。
3.結果  変化のきかったのは大津港から瀬田川までの大津市街地である。ここではほぼ連続した階段状の石積み湖岸となっている。埋立て部分にはびわ湖ホールやホテルなどの建築物のほか、遊歩道や公園などが整備された。湖岸は、大津湖岸なぎさ公園(サンシャインビーチ)のように小礫混じりの砂浜化された場所もある。一方、大きな変化はみられないものの、堅田丘陵前面低地から比叡山麓低地の湖岸では桟橋に変化がみられ、マリーナなどが増加している。20年前にもあった桟橋が新しく改造された事例も多かった。同時に、保養所やマンション、住宅地としての土地利用の変化も西岸の大津市を中心にみられた。
 湖岸堤は20年間にほぼ完成していたが、それが人工の湖岸になった場合 は、コンクリートと石積みで護岸整備されている。その前面に新たにヨシが育成され、砂地になった箇所もある。全体として、当時は石積みのみであった湖岸も、植生のある湖岸に変化している。
 今後の課題としては、湖岸の改変や利用形態をさらに詳しく調査し、湖岸の保全対策への基礎的資料を提供していきたい。     

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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