日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1406
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ネットワーク空間分析ソフトウェアの開発研究
*奥貫 圭一佐藤 俊明岡部 篤行岡部 佳世塩出 志乃
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抄録
1.はじめに
 空間分析法は古くから地理学者たちによって追究され研究が蓄積されてきた。そうした蓄積を受けて,近年,その方法を実践するためのソフトウェアを開発す る研究が増えている。そうした動向について,国際的なものについては,Rey and Anselin(2006)らによりGeographical Analysisの特集号で紹介されている。国内のものについても岡部・村山(2006)で動向を知ることができる。本発表では,そうした動きを踏まえ て,とくにネットワーク空間分析のソフトウェアに焦点をあてて,最近の進展と今後の展望について述べる。

2.空間分析ソフトウェアの普及のための課題
 空間分析のためのソフトウェアに関わる近年の動向の中で注目すべきは,統合型空間分析ソフトウェアとでも呼ぶべき GeoDa(http://geodacenter.asu.edu)の普及であろう。GeoDaのウェブサイトでは,数々の教材が用意されており,普及 を促す大きな力となっているようである。統合型空間分析ソフトウェアについては,国内でも,SDAM:空間データマシン(村山・小野 2003)が開発・提供されているので,普及を促すためにどうするかが今後の課題となる。

3.ネットワーク空間分析のためのソフトウェアSANET
 GeoDaやSDAMは,空間分析法全般を網羅したソフトウェアである。その一方で,特定の分析対象や分析方法に焦点をあてたソフトウェアも多く開発さ れている。SANET(http://sanet.csis.u-tokyo.ac.jp/)は,そうしたソフトウェアのひとつで,ネットワーク空間分析 に機能を限定して開発され,アカデミック向けに提供されている。2009年秋にVer.4β版がリリースされ,これはESRI社の ArcMap(ArcGIS Ver.9.3)の拡張プログラムとして開発され,空間分析を担うコア部分が(Microsoft社のVisual C++ 2008で).Net Frameworkとしてつくられている。
 SANETの主たる機能は,1)ネットワーク上の勢力圏分析,2)ネットワーク上の点分布パターン分析,の二つであり,道路網などを与えたとき,その上 での施設の最近隣勢力圏(ネットワークボロノイ)を図化したり,交通事故発生分布の密度分布図(カーネル密度)を図化したりすることができる。ただ し,GeoDaと比べて教材が貧弱であり,必ずしも利用ニーズに応えられているとは言えない。今後,有効な教材を検討し,提供していく必要がある。

4.おわりに
 本発表では,空間分析ソフトウェアに焦点をあてて,教材の充実により普及がはかられているGeoDaを例にあげつつ,ネットワーク空間分析ソフトウェア SANETとその今後について紹介した。

参考文献
岡部篤行・村山祐司編 2006. GISで空間分析, 古今書院.
村山祐司・尾野久二 2003. オープンソースを利用した統合型空間分析システムの開発, 人文地理学研究,27,71‒105.
Rey, S. and Anselin, L. 2006. Recent Advances in Software for Spatial Analysis in the Social Sciences, Geographical Analysis 38, 1-4.
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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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