抄録
春季、アジアの乾燥・半乾燥地域は、ダスト(黄砂)の発生源となっている。地上から巻き上げられた黄砂は上空の偏西風によって東方へ長距離輸送され、韓国、日本、太平洋地域で観測される。黄砂は、人間への健康被害、農作物への影響、航空機などの交通機関への影響に加えて、太陽放射を直接散乱し、さらに雲の氷晶核として作用することで間接的にも地球の放射収支にも影響する。
気候への影響を評価するためには、巻き上げられて浮遊するダストを定量的に見積もることが重要であるが、発生源域全域において観測的に見積もられた例は少ない。本研究では、現地観測データを用いて、主要な黄砂の発生源であるタクラマカン砂漠のダスト総量の見積もりを試みた。