抄録
乾燥・半乾燥地域であるモンゴルでは、平均場の解析(上野1991: Yatagai and Yasunari 1998など)では説明できない降水現象が存在する。本研究では、天気図と現地の降水の観察から、日々の天気図によって示される個低気圧活動に着目して解析を行った。そして、モンゴルでしばしば発生する干ばつの総観規模の大気のメカニズムを明らかにするため、夏季の低気圧活動の特徴を明らかにし、それに伴う水蒸気輸の流入を明らかにする。
その結果、季節変化を見ると、対象期間の平均では、モンゴル高原における低気圧経路の半数以上が降水をもたらした低気圧であった。その中で、モンゴル高原の北側を通り、対象地域に降水をもたらした低気圧の多数は、主に北方からの水蒸気の輸送によって雨が降っていた。また、モンゴル高原の南側を通って対象地域に雨を降らせた低気圧約半数は、主に南方からの水蒸気輸送により雨が降っていた。研究対象地域では、主に南方から水蒸気が輸送されたことにより雨が降った低気圧の出現頻度は、主に北方から水蒸気が輸送されて雨が降った低気圧の出現頻度とほぼ同程度であった。
次に、経年変化を見ると、対象地域に降水がみられた低気圧の出現頻度は、1999年から2002年にかけて減少状態にあった。さらに、経路と水蒸気輸送方向を合わせた分類では、南側を通過する低気圧の減少状態が顕著であった。一方で、北側を通過する低気圧は安定して出現している。本解析による低気圧活動の状態は,モンゴル国内の夏季降水量の減少状態との関連性があると考えられる。また、ウランバートルの2009年までの降水量を見ると、2003~2009年では、降水量の減少傾向はストップしていた。