日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1504
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軍港都市における消費の空間的分化
*加藤 政洋
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抄録
軍港都市とは、鎮守府ならびに海軍工廠の設置を端緒として、固有の空間編成が生産された、軍事に特化した港湾施設ならびに生産機能を有する都市空間として位置づけることができる。また軍港都市には、消費都市としての側面があることも忘れてはなるまい。 軍港都市における消費のあり方は、近代期の他都市とはいくぶんその性格を異にしていた。端的に言って、それはセクシュアルな領域と密接に関わるとともに、まさにその領域で独自の慣習や様式をも生み出していたのである。すなわち、心寂しい寒村を下地にして編成される軍港都市は、その日常を軍事的な規律・訓練によって生きる男性たちの特異かつ種別的な需要(欲望)にもとづく空間形成の過程ないしその帰結としても捉え返すことができるのではないだろうか。本発表では、この点を軍港都市に固有の空間編成の一面として捉え、「消費の空間的分化」という観点から検討してみたいと思う。消費の空間的分化とは、差異化/差別化された需要に応じて消費の場が分化し、さらには専門特化する過程ないし地理的な布置状況を意味するものである。重要なのは、分化した空間とその布置は、消費する側の社会性(たとえば階梯的な関係性や男性に特化したジェンダー関係とマスキュリニティ)を再構成し強化することもあるという点である。つまり、需要にもとづいて一方的に都市空間が形成されるというのではなく、空間的分化が新たな消費欲を呼び起こしたり、消費や遊蕩の行動様式を規定したりすることもあるということだ。 こうした問題関心から、本発表では海軍用語を参照しつつ 、都市景観を構成する諸空間――具体的には、遊廓、料亭、花街、繁華街――に軍港都市固有の消費の諸相を読み込んでみたいと思う。
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