日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 421
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2011年長野県北部地震における被害分布の特徴
*中埜 貴元小荒井 衛乙井 康成小林 知勝
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抄録

2011年3月12日に長野県と新潟県の県境付近で発生した長野県北部地震(M6.7)では、死者こそ出なかったものの、斜面崩壊や構造物被害等が多発した。しかし、その大局的な分布には偏りがあるように見えるため、現地調査とGIS解析を併用して地形・地質,想定される活断層の位置との関係を検討するとともに、SAR干渉画像との関連を分析した。本発表ではそれらの結果について報告する。
被害は、信濃川(千曲川)流域とその左岸の山間地域で多発している。長野県と新潟県の調べによると、全壊家屋は栄村で33棟、次いで十日町市で26棟、津南町で6棟となっており、栄村と十日町市に集中している。特に栄村の家屋被害は、千曲川沿いの狭い段丘面上にある3集落に集中しており、すぐ隣の津南町の被害と比べても有意に多い。これは、家屋の構造の違いもひとつの要因として考えられるが、被災家屋の多くは基礎地盤が変状していることから、比較的地形に依存した地盤変状の影響が大きいものと考えられる。これは地すべり地形が発達した十日町市にも当てはまる。ところが、斜面崩壊や道路の変状等の地盤変状の分布を見ると、地形や地質だけでは説明が難しい偏りが見られる。そこで、これらの被害集中域をSAR干渉画像上に重ねると、被害がSAR干渉縞の不連続部分や縁辺部に分布していることがわかる。特に、栄村の家屋被害多発地域は、M6.7の本震とM5.9の余震の干渉縞が重なる部分に当たり、地盤変状を促進させるような地殻変動が生じた可能性がある。また、SAR干渉画像から推定される断層モデルの地表到達地点付近では、黒澤ほか(2011)により地表地震断層の出現が報告さ000れており、より詳細な調査が必要である。なお、松多ほか(2011)が報告している宮野原断層付近の地表地震断層を示唆する地表変状は、我々の調査ではほぼすべて重力性の変状で説明できるものであった。

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