日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 206
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発表要旨
地方都市の郊外住宅団地における空き家の発生
*由井 義通阪上 弘彬杉谷 真理子森 玲薫久保 倫子
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抄録
わが国における郊外住宅団地の開発は、大都市における住宅難を解消するという喫緊の課題への対処の必要性からおこなわれたものが多い。大都市圏郊外地域では,短期間に大量の住宅が供給されたにもかかわらず、都市計画で検討されるべき、将来における住民の年齢構成への配慮はほとんどなかった。その結果として,開発当初においては働きざかりの30~40歳代の夫婦と彼らのこどもからなる世帯を中心に入居者が偏り,入居者の年齢階層に著しい偏りがみられた。しかし,開発から30~40年を経過した住宅団地では,偏った年齢層の世帯主夫婦は高齢化し,彼らの子どもたちは独立したことにより高齢者夫婦のみと高齢の単独世帯が中心の住宅地へと変容している。そのため,郊外住宅団地では団地内のスーパーマーケットの閉鎖や学校の閉校などがみられるようになり,活気が無くなって衰退地域となっているところもみられる。本研究の目的は,郊外住宅団地における空き家の実態と空き家発生に伴う地域的課題を把握し,空き家の有効利用などによる地域活性化策を立案する基礎的資料を得ることである。本研究では,広島県呉市郊外の昭和地区を研究対象地域とした。調査は,自治会の協力により呉市昭和地区内の住宅団地の空き家の所在地をリスト化し,現地調査により空き家の管理状態を調べるとともに,空き家の隣接住宅への聞き取り調査によって,空き家になった時期や空き家の所有者の属性について調べた。大都市郊外の住宅団地では,中古住宅として不動産市場で取引されることもあり,必ずしも廃屋とはなるとは限らない。しかし,地方都市の郊外住宅団地のなかでも公共交通機関や生活利便施設が十分ではない地域では,中古住宅として売りに出されたとしても購入者がなかなか見つからないため,長期間にわたって空き家となることが多い。空き家では,庭木の管理が不十分なために隣接世帯への迷惑となったり,不法侵入者による放火などの危険性もある。また,なによりも空き家住宅の増加はコミュニティ維持の担い手を失うことになり,地域の衰退に直結するため,自治体では空き家住宅への入居促進に取り組まざるを得なくなっている。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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