抄録
日本の都市化の様相は1990年代後半以降大きく変化した.大都市圏では,都心部において人口転出超過から転入超過への転換(都心回帰)が見られると同時に,郊外では中心都市への通勤圏の拡大は停止し,さらに人口減少を見せる地区が出現するなどの状況が生まれた.日本では,2005年には総人口が少子化により減少を開始した.このような状況は従来提示されてきた先進国の都市化モデルに描かれたいずれの都市化のステージにも該当しない新しい様相である.この様相を,脱成長社会の都市化と概念化して,その実態把握の必要性を説いた.とくに,三大都市圏の変容に関して,大都市圏の構造変容は進行しつつあり,そのプロセスを理解し,適切に対処するためには,現象の継続的な観察を通して,事象の持続性と関連性を尋ね,都市圏全体の変容を包括したモデルの提示が求められていると指摘した.