抄録
I 本研究の目的1990年代後半から,東京都心部では人口増加が見られるようになった.この時期の人口増加の特徴については,宮澤・阿部(2005)が国勢調査小地域統計を用いた詳しい分析を行っている.本研究では,1990年代後半から約10年を経過した現時点における最新の統計資料を用い,人口増加の新たな実態を明らかにすることを目的とする.II データと分析方法2010年国勢調査資料の集計・公開が進み,本稿執筆時点では,第一次・第二次基本集計,人口移動集計が利用可能である.本研究では,年齢や世帯の類型などのデータが利用できる町丁・字等別集計を用い,2000~2005年と,2005~2010年の二期間について,各指標の増加率や構成比を計算し,主にどのような属性の人口が増えているか分析した.また,人口増加を示す地区を抽出し,その地区ごとにどのような属性の人口が増加しているのか分析した.III 分析結果2000~2005年の期間における人口増加をみると,1990年代後半における人口増加の傾向とさほど違いがない.中央区を中心とした隅田川右岸地区,江東・墨田地区,港区を中心とした城南・城西地区のいずれにおいても人口増加の傾向は持続している.これまでの東京都心部で見られた,30代を中心とした夫婦のみの世帯や夫婦と子どもからなる世帯の増加が見られることも類似している.しかしながら,2005~2010年の期間になると,これまで人口増加の中心的な地区の一つであった城南・城西地区での人口増加が弱まり,池袋を中心とした地区で人口増加が目立つようになった(図1).なおこの地区では,外国人の増加が目立った.台東区の上野駅周辺においても新たに人口増加が見られるようになり,そこでは主に20代の単身世帯が増えた.また,全体として持ち家に居住する世帯の代わりに,民営の借家や給与住宅に住む世帯が増加している.文献宮澤 仁・阿部 隆(2005). 1990年代後半の東京都心部における人口回復と住民構成の変化―国勢調査小地域集計結果の分析から―. 地理学評論78: 893-912.