日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1104
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発表要旨
幕末箱館の古気候復元
*財城 真寿美木村 圭司戸祭 由美夫
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キーワード: 箱館, 19世紀, 気候復元, 陣屋
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抄録
1.はじめに蝦夷地に陣屋が建設された江戸時代後期は,世界的に寒冷な気候が卓越していた「小氷期」と呼ばれる時期にあたる.1872年に,函館に函館気候測量所とよばれる日本で最も古い気象観測所が設立されたが,そこでの観測値は陣屋建設当時まではさかのぼることができない.しかしながら,1872年以前の幕末期である1859~1862年に,函館において実施された気象観測の記録が残存しており,日々の気圧や気温,降水量などが報告されている.これらの観測値を補正均質化すれば,当時の気候を詳細に復元できるほか,現代の気象データと比較することも可能である.本研究では,幕末期に函館で観測された気温データの均質化とその気温データにもとづく当時の気候環境を明らかにすることを目的とする.さらに,函館海洋気象台(以降,海洋気象台)の気温データと連結・比較し,幕末期の函館の気候を総合的に評価することを目的とする.2.資料・データ 1859~1862年に,ロシア人医学者のアルブレヒトによって行われた気象観測の記録が存在する.この観測記録はロシア中央地球物理観測所年報である“ANNALES de L’OBSERVATOIRE PHYSIQUE CENTRAL DE RUSSIE”に含まれており,1日3回(7:00,14:00,21:00)の気圧・気温・湿度および日降水量が報告されている.すべての観測値はデジタル化が完了している.1872年以降については,海洋気象台の月平均値は要素別月別累年値データ(SMP:1872年~),日・時別値は地上気象観測日別編集データ(SDP:1991年~)を使用した.3.均質化日本での公式気象観測開始以前の気象観測値の補正均質化について論じているZaiki et al.(2006)と同様に,幕末期のデータおよび1940年以前の海洋気象台のデータについて,観測地点の高度,観測回数や時刻が異なるデータ間の均質化を行った.そして,最近30年間の海洋気象台データとの比較によって異常値を判別し,データの品質管理を行った(Fig.1).海洋気象台の年平均気温データの補正均質化後の値と経年変化はFig.2のとおりである.4.幕末期の函館の気候の特徴海洋気象台の初期の観測では,露場付近の風通しの悪さに起因するとされる高温傾向がみられる(Fig.2).しかし,その期間をのぞくと,幕末期の4年間は,その後の海洋気象台による観測データと比較して,冬季の気温がやや高めで,夏季の気温が特に低い傾向にある(Fig.1).これが,幕末期の函館周辺の気候の傾向であるのか,観測条件の影響によるのかは,今後精査が必要である.謝辞本研究は,科学研究費補助金 基盤研究B(代表者:戸祭由美夫(奈良女子大学名誉教授)課題番号22320170)の一部を使用した.ここに記して謝意を表します.参考文献Zaiki, M., Können G. P., Tsukahara, T., Jones P. D., Mikami, T. and Matsumoto, K. 2006. Recovery of nineteenth-century Tokyo/Osaka meteorological data in Japan. Int. J. Climatol. 26: 399-423.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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