抄録
気候指標としてのイチョウの黄葉の様子をさらに明確なものにするために、黄葉の進行の様子とその期間の気温変化との定量的な調査を試みた。調査対象地域は東京の西の郊外にある多摩ニュータウンとし、その幹線道路沿いに街路樹として植栽されているイチョウの黄葉の変化の様子と気温変化の様子が基礎的なデータである。イチョウの黄葉に関しては、黄葉の進行の様子を0から4の5段階に識別し観測を行っている。気温はこの調査対象地域内に5か所の定点を定め、30分おきに自動計測を行った。さらに、新たなイチョウの黄葉モデルを提案し、気温の変化とイチョウの黄葉の進み方についての定量的な分析を試みた。その結果、ここで提案したモデルは気温の変化の様子を間接的に包含していると考えることができる。さらに気温の変化の様子を分析した結果、日最低気温と日最低気温の積算値からおおよそ10℃位の最低気温が10日ほど続くと、イチョウの黄葉が始まるという傾向をとらえることができた。今後、気温の変化の様子と黄葉の進み方の関係のさらなる分析が必要ではあるが、郊外型都市の微気候の指標としての信頼性は高まったといえる。