日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 115
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発表要旨
インドネシア共和国ジョグジャカルタ市近郊における河川災害
*海津 正倫マルディアトノ ジャティサルトハド ジュヌン
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抄録
インドネシア共和国のジャワ島には活発な活動を続ける火山が多数存在する.なかでもジャワ島中央部のジョグジャカルタ市の北にそびえるメラピ火山は歴史時代においても著しい爆発と火砕流の発生を繰り返し,最近では2006年,2010年に顕著な火砕流による被害を引き起こした.本報告では,メラピ火山から下流のバントル平野へ向けて流下する河川沿いで発生している土石流や土砂堆積,河岸浸食などについての現状と問題点について検討した.
標高2911 mのメラピ火山は20世紀にはいってからも活発な火山活動を繰り返し,山頂部付近には多量の火山噴出物が堆積しているために斜面を流下する河川の運搬土砂量が大きい.山腹を流れる河川のうち,西南西に向けて流れるプティ川は流路長約30 km,流域面積約40平方キロメートルの,幅の狭い流域を持つ河川で,中流域にあたる中部ジャワ州マゲラン郡ジュモヨ地区付近において国道を横切って流下しているが,その部分では土石流による著しい被害が発生している.土砂の埋積は最大5 mにも達し,建物の1階部分がほぼ埋まってしまった家屋も多い.また ,さらに下流のプロゴ川との合流点から約2km上流側のカランガセム地点では2011年2月および11月に著しい河岸浸食が発生し,20mほどの川幅が100m以上に拡大している.この付近のプティ川は20mほどの深さで火山性の砕屑物からなる地形面を刻んでいる.河岸浸食が発生する以前の河道はやや屈曲する極めて幅の狭いものであったが,河岸浸食によって河道は大きく蛇行し,攻撃斜面側を中心に河岸の後退が著しく進んだ.
本地域は粗粒・細粒の火山噴出物が繰り返し下流域に供給されている場所であり,それらが雨季の豪雨によって土石流の発生を引き起こした.上流側の河床につくられた砂防堰堤はすでにほぼ充填されてしまっていて,多量の降雨によって運ばれた土砂は容易に下流側に達する状態になっていた.また,河道の屈曲なども十分に整備されておらず,土石流による災害は起こるべくして起こった感がある.一方,下流側の河岸浸食は極めて幅の狭い谷が一気に谷底の幅を広げた形で発生し,その発生を予測することはかなり困難であったと考えられる.また,現状では更なる河岸浸食を防止する手立てがない. このような状況に対する方策としては上流側における河床堆積物の浚渫が当面の重要な課題である.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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